DeFi のプロトコルを比べるとき、多くの人がまず手に取る数字が TVL です。計算しやすく、グラフにしやすく、順位を付けやすい数字です。そして、読み違えやすい数字でもあります。
TVL の測り方
データプロバイダーは、プロトコルのスマートコントラクトの残高を読み取り、各資産に現在の市場価格を掛けて合計します。DeFiLlama などのトラッカーは、プロトコル別、チェーン別、時系列で TVL を公開しており、どのコントラクトを数えているかを示す手法も公開しています。細かな点は手法によって異なります。レンディング市場では、供給された資産をすべて数えるところもあれば、借りられている分を差し引くところもあります。流動性プールでは、TVL はプール内のトークンの価値です。
TVL には、バランスシートなら含まれるものが入っていないこともあります。借りられた資産、プロトコル自身が発行するトークン、ガバナンスのためにステークされた資産は、トラッカーの設定によって別に表示されたり、まったく表示されなかったりします。あるプロトコルが TVL の数字を示しているときは、これらのうちどれが含まれているかを確認しましょう。
シンプルな例
あるプロトコルが1,000万ドル分の ETH と500万ドル分のドルトークンを保有しているとすると、TVL は1,500万ドルです。一晩で ETH が5分の1下落すれば、ユーザーが1人も去っていなくても、TVL は1,300万ドルに下がります。TVL は利用状況と同じくらい価格にも左右されます。値動きの激しい市場での TVL のグラフが、部分的には市場そのもののグラフになってしまうのはこのためです。
TVL が二重計上される理由
コンポーザビリティによって、同じ1ドルが複数の場所に現れることがあります。1,000のドルトークンをボールトに供給してボールトシェアを受け取り、そのシェアをマネーマーケットに担保として差し入れ、それを元に借りた資金をプールに供給したとします。各プロトコルは自らが保有する資産を報告するため、元の1,000ドルがエコシステム全体で3回数えられることがあります。トラッカーはこれを調整しようとしており、それが情報源によって合計が異なる理由のひとつです。
TVL からわかること、わからないこと
TVL は、ユーザーがどれだけの価値をプロトコルに託しているかを示します。これは実際に意味のあるシグナルです。大きな TVL は築くのに時間がかかり、攻撃者からもリサーチャーからも厳しい目が向けられます。しかし TVL からは、コードが安全かどうか、利回りが持続可能かどうか、1日でどれだけの価値が流出しうるかはわかりません。プロトコルは一時的なトークンリワードで TVL を素早く伸ばすことができますが、インセンティブで集まった価値は、それが終わると去っていくことがよくあります。また、TVL は誰がその価値を保有しているかも教えてくれません。何千人ものユーザーに分散した1,000万ドルと、1回のトランザクションで去りうる3つの大口アカウントが保有する同じ額とでは、振る舞いがまったく異なります。
リスクと限界
TVL は、価格変動、二重計上、インセンティブ、トラッカー間の手法の違いといった、既知のゆがみを伴う規模の指標として扱いましょう。結論を出す前に、収益、独立したユーザーの数、保有がどれだけ少数の大口アカウントに集中しているか、そしてセキュリティの実績と比べてください。TVL が大きいということはユーザー基盤が大きいということであり、同時に標的として大きいということでもあります。
Tori Finance での使われ方
Tori Finance は DeFiLlama と CoinGecko に掲載されており、ほかのプロトコルの数字と並べてその推移を追うことができます。どのプロトコルでも同じですが、これらの数字が表すのは規模であって、安全性や将来のリターンではありません。
よくある質問
暗号資産でいう TVL とは何ですか?
Total Value Locked の略で、プロトコルのスマートコントラクトに保有されているすべての資産の時価を指し、通常は米ドルで表示されます。DeFi のプロトコルやブロックチェーンの規模を比べるのに使われます。
TVL が大きいプロトコルほど安全ですか?
そうとは限りません。TVL が示すのは、ユーザーがプロトコルにどれだけの価値を置いているかであって、そのコード、担保、戦略が健全かどうかではありません。TVL が大きいと、プロトコルは標的としてより魅力的にもなります。
なぜサイトによって TVL の数字が異なるのですか?
トラッカーごとに手法が違うからです。どのコントラクトを数えるか、借りられた資産を含めるか、複数のプロトコルで再利用される資産をどう扱うか、どの価格を使うかが異なります。
関連用語
DeFiのコンポーザビリティ
コンポーザビリティとは、DeFi のプロトコル同士が積み木のようにつながり、あるプロトコルのトークンを、誰の許可も得ずに別のプロトコルの担保、流動性、利回りの源泉として使える性質のことです。トークンにできることを大きく広げる一方で、プロトコル同士のリスクも結びつけます。
マネーマーケット
伝統的な金融でマネーマーケットといえば、短期の資金が貸し借りされる市場のことです。DeFi では通常、ユーザーが資産を供給して利回りを得て、ほかのユーザーが担保を元に借り入れをするレンディングプロトコルを指し、そのレートは需要と供給に応じて動きます。
流動性プール
流動性プールとは、2種類以上のトークンを保有し、トレーダーがそれを相手にスワップするスマートコントラクトで、価格は板ではなく計算式で決まります。流動性の提供者はトークンを供給して取引手数料の一部を受け取り、その見返りに価格リスクとスマートコントラクトリスクを引き受けます。
出典
- DeFiLlamadefillama.com
- BIS Quarterly Review: DeFi risks and the decentralisation illusionwww.bis.org
- ethereum.org: Decentralized finance (DeFi)ethereum.org
Tori Finance チームが執筆しました。投資助言ではありません。利回りは変動し、元本を失うおそれがあります。