債券市場では古くから、債券の元本と利払いを切り離し、別々の商品として販売してきました。利回りトークン化は、同じ考え方を DeFi に持ち込むものです。変動利回りを生むトークンを、元本を受け取る権利と利回りを受け取る権利とに分け、それぞれを独立して取引できるようにします。
仕組み
利回りを生むトークン、多くの場合はボールトトークンを利回りトークン化プロトコルに入れると、同じ満期日を持つ2つのトークンが発行されます。
- 元本トークン(PT):満期に原資産と交換できるトークン。
- 利回りトークン(YT):原資産が満期までに生む利回りをすべて受け取り、満期で受け取りが終わるトークン。
PT 1枚と YT 1枚を合わせると、元のポジションと等しくなります。Pendle はこの設計に基づく広く使われているプロトコルで、それぞれの部分を売買できる市場を備えています。
固定レートが生まれる仕組み
PT は満期前には割引価格で取引されます。保有者がその間の利回りを手放しているからです。割引価格で買って満期まで保有すれば、原資産が価値を保つ限り、購入した日にリターンが確定します。PT が固定レートのポジションと表現されるのはこのためです。YT はその裏返しで、将来の利回りに対するレバレッジのかかったポジションです。利回りが市場の予想より高ければ YT の保有者は利益を得て、低ければ損失を被ります。どちらにしても、YT の価値は満期にゼロになります。
具体例
あるドル建てのボールトトークンが変動利回りを生み、満期まで1年の PT が原資産の0.95倍で取引されているとします。買い手は、1年後に1,000ドル分の原資産と交換できる PT に950ドルを支払います。購入した日に、約50ドルのリターンが決まるわけです。YT の買い手は、同じ1年間に1,000ドル分の原資産が生む利回りに対して約50ドルを支払います。実際の利回りが70ドルになれば YT の買い手は得をし、30ドルなら損をします。PT の買い手は、どちらの場合も同じ1,000ドルを受け取ります。
役に立つ理由
利回りトークン化は、変動利回りに市場価格を与えます。確実性を求める保有者はレートを確定でき、レートについて見通しを持つ人はそれを取引でき、レンディング市場は PT を担保として受け入れられます。満期が近づくにつれて PT の価値は原資産に近づいていくからです。これはコンポーザビリティのわかりやすい例です。このプロトコルは、ERC-4626 に基づくもののように、予測どおりに振る舞う利回りトークンであればどれとも組み合わせられます。
リスクと限界
- 固定レートは原資産次第です。原資産が価値を失えば、PT も価値を失います。
- 満期前に PT を売るということは、市場価格を受け入れるということであり、レートが上がったり流動性が細ったりすれば、予想より低い価格になることがあります。
- YT は満期が近づくにつれて価値を失い、満期にはゼロになります。そのため、利回りが期待を下回れば、YT の保有者は支払った額の大部分を失うことがあります。
- プロトコルは、原資産のリスクの上に、自らのスマートコントラクトとオラクルのリスクを加えます。
この方法で作られた固定レートは、将来の利回りに付けられた市場価格であり、約束ではありません。
Tori Finance での使われ方
Pendle は、Morpho や Curve と並ぶ Tori Finance の統合先のひとつです。Tori Finance の ERC-4626 ボールトトークンである strUSD は変動利回りを積み上げており、それはまさに利回りトークン化プロトコルが分割し、価格を付けるために作られている種類の利回りです。
よくある質問
PT と YT の違いは何ですか?
元本トークン(PT)は満期に原資産と交換でき、それまでは割引価格で取引されます。利回りトークン(YT)は満期まで原資産の利回りを受け取り、満期を過ぎると価値はなくなります。
利回りトークン化はどのように固定レートを生み出すのですか?
元本を割引価格で売ることによってです。原資産の価値を下回る価格で PT を買って満期まで保有すれば、原資産が価値を保つ限り、購入した時点でリターンが確定します。
利回りトークン化のリスクは何ですか?
原資産が価値を失うこと、満期前に PT の価格が下がること、利回りが期待を下回れば YT が無価値で満期を迎えること、そしてプロトコル自体のスマートコントラクトリスクが加わることです。
関連用語
変動利回り
変動利回りとは、あらかじめ決められているのではなく、市場環境に応じて時間とともに変わるリターンです。DeFi では、借り手が支払う利払いやトレーディング活動からの収益など、常に実際の源泉までたどれるはずのもので、説明できる源泉のない利回りは警告のサインです。
ボールトトークン
ボールトトークンとは、スマートコントラクトが管理する資産プールに対する持ち分です。ボールトが収益を上げると、保有者の残高は変わらないまま、1シェアあたりの原資産の価値が増えていきます。そのため、ほかのプロトコルにとって保有や追跡がしやすいトークンです。
DeFiのコンポーザビリティ
コンポーザビリティとは、DeFi のプロトコル同士が積み木のようにつながり、あるプロトコルのトークンを、誰の許可も得ずに別のプロトコルの担保、流動性、利回りの源泉として使える性質のことです。トークンにできることを大きく広げる一方で、プロトコル同士のリスクも結びつけます。
出典
- Pendle documentation: Introductiondocs.pendle.finance
- Pendle documentation: Principal token (PT)docs.pendle.finance
- Pendle documentation: Yield token (YT)docs.pendle.finance
Tori Finance チームが執筆しました。投資助言ではありません。利回りは変動し、元本を失うおそれがあります。