いま、数千億ドル規模の資金がトークンとしてブロックチェーン上に置かれていますが、その大半は保有者に何の収益ももたらしていません。合成ドルは、この状況に対するひとつの答えです。運用されるポートフォリオによって1ドルの価値を保つことを目指すトークンで、ポートフォリオのリターンを保有者に届けられるようにしています。
合成ドルの仕組み
ある資産を保有しながら、同時にその資産が下落すると利益が出るポジションも持つポートフォリオを想像してください。一方の値動きがもう一方で相殺されるため、合計の価値は一定のドル額の近くにとどまります。これをデルタニュートラルなポジションと呼びます。収益は、ポジションを保有している間に得られるもの、たとえば市場で支払われるレートや担保そのもののリターンから生まれます。設計の違いは、主にその収益がどこから来るのか、そしてどの程度集中しているのかにあります。
具体例
あるプロトコルが1,000ドル分の担保を受け取ったとします。プロトコルはある資産を1,000ドル分購入し、同じ規模のショートポジションを開きます。資産が1割下落すると、保有分は約100ドル減り、ショートは約100ドル増えるので、ポートフォリオの価値はおおむね1,000ドルのままです。1か月の間に、保有分とヘッジを合わせていくらかの収益、たとえばコスト控除後で数ドルが生まれます。保有者に届くのは資産価格の上昇ではなくこの収益で、多くの場合、戦略が収益を上げるにつれて価値が増える別のボールトトークンを通じて届けられます。
合成ドルとステーブルコインの違い
USDC や USDT のような法定通貨担保型のステーブルコインは、現金や短期国債を準備金として保有し、その準備金が生む収益は通常、発行体が受け取ります。合成ドルは、どのドルトークンにも問うべき3つの点で異なります。担保は何か、収益はどこから来るのか、そして誰でもその両方を確認できるのか、という点です。暗号資産を担保にし、無期限先物のショートでヘッジする合成ドルもあり、その場合の収益はトレーダー同士が支払い合うファンディング料に応じて増減します。別の市場で別の資産をヘッジするものもあります。名称だけではほとんど何もわかりません。重要なことの大部分は、この3つの問いへの答えが教えてくれます。
保有する前に確認すべきこと
- 利回りの源泉を平易な言葉で説明できるか。誰も説明できないなら、それを警告と受け止めてください。
- 独立したプロバイダーによる準備金証明があるか。理想的には継続的に更新されているもの。
- スマートコントラクト監査を受けているか、また誰が実施したか。
- 相場が急変したときに何が起きるか。合成ドルの利回りは変動し、保証されるものではありません。また、ストレス下では市場価格が1ドルから離れることがあります。
リスクと限界
合成ドルは、ある種類の信頼を別の種類の信頼に置き換えるものです。保有者は銀行口座に頼る代わりに、担保の質、急速に動く市場でも機能するヘッジ、ポジションが置かれている取引の場やカウンターパーティ、そして誰が何を所有しているかを記録するスマートコントラクトに頼ることになります。急激な相場変動、担保の問題、薄い流動性によって、どのドルトークンも目標とする価値から離れることがあり、これはデペッグと呼ばれます。だからこそ、見出しの数字よりも、リアルタイムの準備金データと戦略についての明確な説明が重要なのです。
Tori Finance での使われ方
trUSD は Tori Finance の合成ドルで、USDC/USDT を担保としています。運用には、グローバル市場から収益を得るデルタニュートラル戦略が使われ、ポジションは米ドルにヘッジされています。strUSD は戦略の変動利回りを積み上げる ERC-4626 ボールトトークンで、strUSD のシェアはボールト内に保有される trUSD に対する請求権です。準備金は、Accountable の準備金証明 tori.accountable.capital で誰でも確認できます。スマートコントラクトは Sherlock と Nethermind による監査を受けています。
よくある質問
合成ドルがドルの価値を失うことはありますか?
はい。急激な相場変動、担保の問題、薄い流動性によって、どのドルトークンも目標とする価値から離れることがあります。だからこそ、リアルタイムの準備金データと戦略についての平易な説明が重要です。
合成ドルの利回りは固定ですか?
いいえ。市場環境に左右され、時間とともに変化します。利回りは変動し、保証されるものではありません。
合成ドルはステーブルコインとどう違いますか?
法定通貨担保型のステーブルコインは現金や国債を準備金として保有し、その収益は通常、発行体が受け取ります。合成ドルは担保と相殺し合うポジションを組み合わせて保有し、変動するリターンを保有者に届けることができます。準備金の確認方法も両者で異なります。
関連用語
デルタニュートラル
ロングとショートのエクスポージャーが互いに相殺し合い、原資産の価格が動いても合計の価値がほとんど変わらないポジションを、デルタニュートラルと呼びます。そのリターンは相場の方向に賭けることではなく、ポジションを保有している間に得られるものから生まれます。
ステーブルコイン
ステーブルコインとは、主に現金や短期国債を準備金として保有することで、多くの場合1米ドルという安定した価値を保つように設計されたトークンです。ドルを時間を問わずオンチェーンで動かせるようにしますが、法定通貨担保型の発行体は通常、準備金が生む運用益を自ら受け取ります。
担保
担保とは、問題が起きたときに損失をカバーできるよう、ローンやトークンの裏付けとして差し入れられる資産です。DeFi では、その量と同じくらい種類、質、置かれている場所が重要で、価値が大きく下がるとスマートコントラクトが自動的に売却することがあります。
利回り付きドルトークン
利回り付きドルトークンとは、裏側にある戦略のリターンを保有者に届けるドル建てトークンで、多くの場合、時間とともに1トークンあたりの価値が増えていきます。リターンの源泉は国債、レンディング、トレーディング戦略などで、その利回りは変動します。
準備金証明
準備金証明とは、トークンやプラットフォームの裏側にある資産が実際に存在することを独立した立場で確認するもので、理想的には誰でも検証できるよう継続的に公開されます。示すのはバランスシートの資産側であり、それだけで負債を証明したり、あらゆるリスクをカバーしたりするものではありません。
出典
- Tori Finance documentationdocs.tori.finance
- Accountable: Tori proof of reservestori.accountable.capital
- BIS Annual Economic Report 2025: The next-generation monetary and financial systemwww.bis.org
Tori Finance チームが執筆しました。投資助言ではありません。利回りは変動し、元本を失うおそれがあります。